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[東京 24日 ロイター] - 日銀が10月29―30日に開いた金融政策決定会合では、近い将来の利上げを意識した発言が相次ぐ中、何人かの委員が企業の賃金・価格設定行動が積極化しているもとで「為替円安の進行が、輸入物価の上昇などを通じて物価の上振れにつながりやすい状況にある」と述べていたことが分かった。日銀が24日、決定会合の議事要旨を公表した。
日銀は10月会合に続く12月18―19日の決定会合で政策金利を0.75%に引き上げることを決めた。植田和男総裁は、12月会合でも複数の委員が円安の物価への影響に言及したことを明らかにしている もっと見る 。
10月入り後、外為市場では円安が進んだ。同月の決定会合である委員は「米国で所得税還付などにより景気が過熱し、円安などを通じてわが国の物価が大きく上押しされるリスクを考えれば、早めの利上げが望ましい」とする一方で、米国の労働市場に見られる「奇妙なバランス」が崩れ始め、資本市場も調整局面を迎え、日本の物価や景気に想定以上に下押し圧力が掛かるリスクもまだ否定しきれないと述べ、利上げの是非は「今しばらく見極めて判断する方が適当だ」とした。
0.75%への利上げを主張した委員のうちの1人は、既に物価目標の実現がおおむね達成されたと考えられるほか、「足元では円安進行に伴う物価の上振れリスクにも留意が必要」と指摘した。
決定会合では高田創、田村直樹の両委員が0.75%への利上げを提案したが、反対多数で否決された。もっとも、議事要旨からは、近い将来の利上げに向けて機が熟しつつあることが示された。
多くの委員が「経済・物価の中心的な見通しが実現する確度は少しずつ高まってきている」としつつ、海外経済を巡る不確実性がなお高い状況にある中で、企業の積極的な賃金設定行動が途切れることがないかどうか「もう少し確認する必要がある」と述べていた。委員からは「利上げを行うべきタイミングが近づいている」、「早めの利上げが望ましい」、金利の正常化へ「条件が整いつつある」といった発言が相次いだ。
先行きの政策運営について、多くの委員が企業の賃上げ動向の確認を通じて「賃金と物価がともに緩やかに上昇していくメカニズム」が維持されていることを見極めることが重要だとの認識を示した。何人かの委員は、来年の春季労使交渉について、今年の物価動向や高水準の企業収益に加え、人手不足に伴う労働需給の逼迫や最低賃金の引き上げなどを踏まえると「今年と同程度の賃上げが期待できるのではないか」と踏み込んだ。
日銀は12月会合で、来年は「今年に続き、しっかりとした賃上げが実施される可能性が高い」として利上げに踏み切った。
決定会合では、景気に対して緩和的でも引き締め的でもない中立金利についても言及があった。何人かの委員は、中立金利は「現在の政策金利より高い位置にある」として、経済・物価情勢の改善に応じて金融緩和度合いを調整していくことは「長い目で見て安定した経済・物価の実現につながる」と述べた。別のある委員は、インフレ率が目標に到達するまで金利の調整を一切行わないとした場合、目標達成時点で一挙に金利を中立金利まで引き上げる必要があるが「その時々の中立金利を具体的に特定することはできない」とし、「これを成功裏に行うのはほぼ不可能」と語った。
和田崇彦



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