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(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)
『赤旗』報道に、藤田氏は「適法」を強調したが…
日本維新の会の藤田文武共同代表に、政治とカネ、公設秘書のあり方を巡る問題が起きている。『しんぶん赤旗』の報道が契機となった。その後も、続報や類似事案が次々と報じられている。
以下において、藤田氏の事案と、過去の日本維新の会の対応や類似事案を振り返る。その上で、藤田氏自身も「適法」を強調したが、政治家は一般のいわゆるビジネスパーソンではなく、憲法で定められた全国民の代表であり、また憲法第九十九条が定めている通り、憲法、法律に関して尊重、擁護義務を有していると考えられる存在である。
日本国憲法第九十九条
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
最近では、少し政治に詳しいような人物が堂々と「(政治)倫理には根拠がない」などとうそぶく姿を目にするようになってしまっている。
だが我々が政治家に潜在的に問うべきは、一国民と同等の「適法性」でも、脱法的なそれでもないはずだ。国民の代表としての品格であり、倫理性であろう。そのことは青臭くても何度でも強調しなければならない。
「政治倫理」は日常生活における倫理や道徳と同義ではないし、そうであってはならない。そうであるからこそ、後述するように政治家の不祥事の度毎に改正を重ねてきた国会法や両院の政治倫理綱領に「政治倫理」に関する項目が存在するのではなかったか。
もしそれらの運用実態がザル法になっているのであれば、論理的には運用厳格化も議論されるべきであるのは言うまでもないことだろう。現代日本政治における「政治倫理」には、それこそ国会法や歴史に支えられた意味がある。そのことを振り返ってみたい。
事の発端は、藤田文武氏と代表を務める2つの政治団体にあった。同氏の公設第一秘書が代表取締役を務めるデザイン会社に対し、数年間で合計約2000万円の業務を発注していたと報じられていることにある。
原資には、調査研究広報滞在費が含まれているから、つまり税金が含まれていたことになる。この問題に関して、藤田氏側は一貫して「法律的には問題ない」という点を強調した。
その説明の支えとなるのは、「国会議員の秘書の給与等に関する法律」(秘書給与法)第21条の2という条文だ。この条文は、公設秘書が他の仕事に就いたり、事業を営んだりすることを原則として「禁止」している(兼職禁止)。
しかし、この条文には続く項目に、例外規定が記されている。国会議員が「職務の遂行に支障がない」と認めて許可し、議長に届け出た場合だ。この場合に限り、兼業が認められることになっている。藤田氏側は、この手続きをきちんと踏んでいたとしている。そのため、「法律上の問題はない」と主張したわけだ。
秘書給与法第二十一条
(兼職禁止)
第二十一条の二 議員秘書は、他の職務に従事し、又は事業を営んではならない。
2 前項の規定にかかわらず、国会議員が議員秘書の職務の遂行に支障がないと認めて許可したときは、議員秘書は、他の職務に従事し、又は事業を営むことができる。
3 議員秘書は、前項の許可を受けた場合には、両議院の議長が協議して定めるところにより、その旨並びに当該兼職に係る企業、団体等の名称、報酬の有無及び報酬の額等を記載した文書を、当該国会議員の属する議院の議長に提出しなければならない。この場合においては、両議院の議長が協議して定める事項を記載した文書を添付しなければならない。
4 前項前段の文書は、両議院の議長が協議して定めるところにより、公開する。
だが幾つかの疑問が残る。



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