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6日の米株式相場は反落。金融市場全体でボラティリティーが高まる中、米労働市場の冷え込みを明白に示す兆候を受けて、高バリュエーションのハイテク株を中心に売りが膨らんだ。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測を背景に、国債は上昇した。
株式終値前営業日比変化率S&P500種株価指数6720.32-75.97-1.12%ダウ工業株30種平均46912.30-398.70-0.84%ナスダック総合指数23053.99-445.81-1.90%
株式相場はここ3営業日で2度目の下落。米再就職支援会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによると、企業が10月に発表した人員削減数は同月として過去20年余りで最多となった。ナスダック100指数は1.9%安。米株式市場の「恐怖指数」として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー指数(VIX)は一時20に上昇した。
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利下げ観測は人工知能(AI)ブームとともに強気相場を支えてきたが、足元では高過ぎるバリュエーションへの懸念が浮上している。テクニカル分析の指標は慎重姿勢を促すシグナルを発信しており、限られた銘柄だけが相場上昇をけん引していることへの警戒感も強まっている。
サスケハナ・インターナショナル・グループのクリス・マーフィー氏は株価下落について、むしろ市場の「フロス(泡)」をある程度取り除く動きのようだと指摘した。
フォレックス・ドットコムのファワド・ラザクザダ氏は「再びリスクオフの動きになっている」と述べた。「常に利下げ観測が材料になるとは限らず、現実が忍び寄ってきたということだ。正直、市場にはこうした現実確認が必要だった。数カ月にわたるAI主導の熱狂の後、投資家は改めてファンダメンタルズの重要性を認識している」と語った。
相次いだFRB当局者の発言にも注目が集まった。クリーブランド連銀の ハマック総裁は、インフレは過度に高く、米金融当局にとっては依然として労働市場の弱さよりも大きなリスクだと述べた。シカゴ連銀の グールズビー総裁は経済専門局CNBCで、政府機関の閉鎖が続き、インフレデータに乏しいことから、利下げを継続することには一層慎重にならざるを得ないとの考えを示した。バーFRB理事は労働市場の健全性を維持する重要性を指摘しつつ、インフレ対応ではまだやるべきことが残っていると述べた。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのエリアス・ハダッド氏は「FRBの金融政策が抑制的なままだと、すでに脆弱(ぜいじゃく)な雇用情勢がさらに悪化しかねない上、インフレが上振れするリスクも顕在化していないため、12月に0.25ポイントの追加利下げが実施されるとの見方を維持している」と述べた。
チャレンジャーによると、米企業が10月に発表した人員削減数は15万3074人で、前年同月のほぼ3倍に達した。中心はテクノロジー企業と倉庫業だった。10月としては2003年以来の高水準で、当時は携帯電話の普及が現在と同様に産業に大きな変化をもたらしていたと、最高収益責任者(CRO)アンディ・チャレンジャー氏が指摘した。
民間の労働市場分析会社レベリオ・ラボが発表したデータによれば、10月の米雇用者数は約9000人減少。
ストラテガスのドン・リスミラー氏は、米国の労働市場は崩壊しているわけではないが、衝撃に強いとも言えないと指摘。「FOMCの一部メンバーは、12月会合でのフェデラルファンド(FF)金利の追加引き下げに慎重な姿勢を見せているが、労働市場が不安定になれば、利下げを余儀なくされる可能性が高い」と述べた。
国債
米国債相場は反発(利回りは低下)。米民間経済指標が雇用市場の減速を示唆したため、来月の利下げ観測が強まり、買いが入った。10年債利回りは約1カ月ぶりの大幅低下。
国債直近値前営業日比(bp)変化率米30年債利回り4.68%-5.8-1.22%米10年債利回り4.09%-7.2-1.73%米2年債利回り3.56%-6.8-1.87%米東部時間16時19分
スワップ市場では0.25ポイントの12月利下げ確率が60%超と、5日の約50%から上昇した。
みずほインターナショナルのエブリン・ゴメスリヒティ氏はこの日の民間統計について、「労働市場に関するFRBの慎重もしくはハト派的な発言を後押しする内容だ」と述べた。
前日は10月の米 民間雇用者数が増加し、米国債は売られていた。
今週のデータが示す強弱まちまちな内容について、コロンビア・スレッドニードル・インベストメントのポートフォリオマネジャー、エド・アルフセイニ氏は「民間部門の雇用を示すさまざまな指標が黄色や赤色の信号を発しているが、雇用の減少が失業率を押し上げるかどうかは、今のところはっきりしない」と述べた。
外為
外国為替市場ではブルームバーグのドル指数が続落。米政府機関の閉鎖が続く中、民間の米経済指標で雇用市場の急速な冷え込みが示されたことを受け、ドル売りが出た。
円は対ドルで上昇。米国債利回りの低下を背景に円買い・ドル売りが優勢になった。円は一時、152円83銭まで上昇した。
為替直近値前営業日比変化率ブルームバーグ・ドル指数1221.34-3.77-0.31%ドル/円¥153.03-¥1.09-0.71%ユーロ/ドル$1.1548$0.00560.49%米東部時間16時20分
パラメトリックの債券ポートフォリオマネジャー、ニシャ・パテル氏はブルームバーグテレビジョンで「今後転機となるのは、政府統計が再開されて、FRBが注視している実際のデータに弱さが見え始めた時だろう。その時点になれば、すでにその領域に入っていたと分かるかもしれない。今は多分まだ分からないだけだろう」と述べた。「FRBが最も重視しているのは、まさにその点だ」と語った。
イングランド銀行(英中央銀行)は予想通り政策金利を据え置いたが、僅差の投票による決定は、12月の利下げに向けた布石となる可能性がある。ポンドは対ドルで上昇したが、英中銀の決定が伝わると、伸び悩む場面もあった。
原油
原油先物相場は続落。供給見通しへの不透明感が意識されるなか、株式相場の下落が重しとなった。サウジアラビアによる原油販売価格引き下げも材料視された。
サウジは12月のアジア向け原油販売価格を11カ月ぶりの低水準に引き下げた。値下げ幅は市場予想の範囲内だったものの、来年にかけて供給過剰が見込まれる中、産油国が需要の伸び鈍化を警戒している弱気サインと受け止められた。
原油価格は下げ基調が続いている。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油の先物期近2限月の価格差であるプロンプトスプレッドは、ここ数週間で縮小し、2月以来の低水準に接近。北海ブレント原油でも同様の傾向がみられる。
一方、石油製品市場の動きは異なる。トレーダーらは米国が主導するロシア産原油の購入規制や、ウクライナによるロシアのエネルギー施設への攻撃が供給に与える影響を、引き続き注視している。こうした要因に世界的な製油能力の低下も重なり、ディーゼル油や軽油の先物価格は7月以来の高水準に上昇し、エネルギー市場全体の支えとなっている。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「石油製品の価格が堅調に推移しており、足元で原油価格を下支えしている」と語った。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は、前日比17セント(0.3%)安の1バレル=59.43ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は14セント(0.2%)下げて63.38ドル。
金
金相場はほぼ変わらず。米雇用市場の著しい減速を示すデータを受けて利下げ観測が広がる中、複数の米金融当局者発言が意識された。金スポット価格は総じて1オンス=4000ドルをわずかに下回る水準で推移した。
今年の金相場は年間ベースで1979年以来の大幅高が見込まれている。利息を生まない金投資には米利下げが追い風となっているほか、金を裏付けとする上場投資信託(ETF)への資金流入や各国・地域の中央銀行による金購入も相場を支えている。
マッコーリー・グループのエコノミストはただ、年初来で約50%上昇した金価格が、今後1年で下落に転じると予想している。同行のエコノミストチームは「世界経済が持ち直し始め、中銀の金融緩和サイクルが終盤に差しかかる中、実質金利は依然として高水準にあり、米中間の緊張も(少なくとも現時点では)緩和している。短期的には金価格が天井を打った可能性がある」と6日のリポートで指摘した。
スポット価格はニューヨーク時間午後2時現在、前日比7.91ドル(0.2%)高の1オンス=3987.48ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、1.9ドル(0.1%未満)安の3991ドルちょうどで引けた。
原題: Wall Street Rattled by Job Woes as AI Winners Sink: Markets Wrap(抜粋)
US Treasuries Jump as Weak Jobs Data Fuel Rate-Cut Bets
Dollar Falls as Data Reveal Souring US Jobs Outlook: Inside G-10
Oil Falls as Traders Weigh Saudi Price Cut, Supply Concerns
Gold Little Changed as Traders Eye Outlook for Fed Rates
— 取材協力 Subrat Patnaik, James Hirai, Neil Campling, Kwaku Gyasi and Eleanor Thornber